子宮頸がんワクチン
子宮頸がんとは?
婦人科のがんで最も一般的な子宮がんには、子宮頸がんと子宮体がん(子宮内膜がん)があります。
子宮頸がんは、外子宮口付近に発生することが多いがんです。
普通の婦人科の診察でこの部分を観察したり、検査すべき細胞や組織を採取することが可能です。
従って、早期発見が容易です。
子宮がんにかかる人は、全体として年間約18,600人で、このうち子宮頸がんが約9,000人、子宮体がんが約8,600人、どの部位か情報がない子宮がんが約1,000人となっています。
(全国がん罹患モニタリング集計2006年報告)
また、子宮がんで亡くなる方は、全体として年間約5,900人、このうち子宮頸がんが約2,700人、子宮体がんが約1,900人、どの部位か情報がない子宮がんが約1,400人となっています。
(人口動態統計2010年)
年齢別にみた子宮頸がんの発症率は、20歳代後半から40歳前後まで増加した後緩やかに減少して、70歳ころ再び増加します。
近年、発症率、死亡率ともに若年層で増加しており、20~30代では乳がんの発症率よりも多く、急増しています。
子宮頸がんの原因
子宮頸がんの発生には、その多くにヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)の感染が関連しています。
子宮頸がん患者さんの90%以上からHPVが検出されることが知られています。HPVは性行為によって感染します。HPVは多くのタイプに分かれますが、子宮頸がんの原因になるタイプは16、18、52、58が多く、16と18で58.8%、さらに52と58を加えると72.5%となります。
近年、子宮頸がんが20~30代に急増している原因としては、初交年齢の若年齢化が考えられます。
2008年の東京都の報告では、高1女子での初交経験者は25%、高3では45%の女子が初交経験者です。これは大都会に限った話ではありません。
茨城県の報告では10~20代の婦人科検診を受けた女性の30%がすでにHPVに感染しています。
HPVに感染した人が全員子宮頸がんになるわけではありません。発癌するのはHPV感染者の0.15%程度です。
しかし、感染してから癌になるまでには10年~20年経過する場合が多く、10代でHPVに感染すると、30才前後で癌になる場合が多く、妊娠の際に癌が発見されて出産を諦めなければならない事例が多く報告されています。
また、子宮を残し妊娠・出産ができるようにしながら、再発しないようにすることは癌になってからでは難しく、さらに、治療がうまくいっても、再発や妊娠に対する不安がその後の生活に影響するのでは?と思われます。
この為、子宮頸がんを予防するにはHPVに感染する前(即ち10代)に予防接種をする必要があります。
子宮頸がんの予防
最近、一部のHPV感染を予防できるワクチンが使用可能になりました。
2009年12月22日よりHPV16型とHPV18型の感染を防ぐワクチン、サーバリックスが接種することができるようになりました。2011年より公費助成が始まり、2011年9月からはHPV16型とHPV18型に加え、尖形コンジローマの原因となるHPV6型、HPV11型も予防するガーダシルも接種が出来るようになりました。
さらに2012年5月の厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会現在予防接種部会では定期接種化に向けて検討されているワクチンのうち、子宮頸がん、Hib、小児用肺炎球菌の3ワクチンの定期接種化を優先すると提言され、近い将来定期接種化されることが期待されます。
子宮頸がんワクチンを接種することで、子宮頸がんの原因の約60%を占めるHPV16型、18型の感染と、さらにその2つのウイルスに交差免疫性のあるHPV52型、58型を含めると約72%のHPV感染を予防することが出来ます。
しかし、これらワクチンは、すでに今感染しているHPVを排除したり、子宮頸部の前がん病変やがん細胞を治す効果はなく、あくまで接種後のHPV感染を防ぐものです。
サーバリックス | ガーダシル | |
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ワクチンの特徴 | 2価ワクチン 子宮頸がんに対し免疫が期待できる。 接種後の抗体の上昇が良い。 |
4価ワクチン 子宮頸がん+尖形コンジローマにも効果が期待できる。 |
接種間隔 | 0、1、6ヶ月目 | 0、2、6ヶ月目 |
サーバリックスはHPV16型、18型の予防ワクチンで、ガーダシルはそれに加え尖形コンジローマの原因ウイルスの6型、11型も予防できるワクチンです。
サーバリックスの方が抗体の上昇が良いのですが、現時点での予防効果には差がありません。長期的効果については今後の経過を見ていく必要があります。十分な効果を得るためには同じワクチンを3回接種する必要があります。途中で他のワクチンに変更することは出来ませんので、担当医とよく話し合って決めて下さい。
子宮頸がん予防ワクチンを接種することでHPV16型、18型、52型、58型の感染を防ぐことができますが、全ての発がん性HPVの感染を防ぐことができるわけではありません。
そのため、ワクチンを接種しなかった場合と比べれば可能性はかなり低いものの、ワクチンを接種していても子宮頸がんにかかる可能性はあります。
子宮がん検診を受けましょう。
子宮頸がんを完全に防ぐためには、子宮頸がんワクチンの接種だけでなく、定期的に子宮頸がん検診を受けて前がん病変のうちに見つける事が大切です。ワクチン接種後も、年に1回は子宮頸がん検診を受けるようにしましょう。
残念なことに、日本の子宮頸がん検診受診率は24%と、諸外国(米国83%、英国70%、韓国42%、2007年)に比べ、大幅に低くなっています。日本で子宮頸がん患者が若年層に増えているのは、若い世代の人々が検診を受けていないということが大きな要因です。子宮頸がんは、初期症状の全くない場合が多いことから、20代からの定期的な検診受診が極めて重要です。
子宮頸がんはワクチンを接種することと、定期的に健診を受けることによって予防できる疾患です。ワクチン接種率と検診受診率がともに85%以上になれば、95%の子宮頸がんの予防が可能になります。
日本の現状は予防接種、検診ともに50%にも満たない状況です。
たとえ、ワクチン接種を受けた場合であっても、定期的に子宮頸がん検診を受けることが大切です。