子どもの家庭内に潜む危険
事故の防止対策
乳児健診で、「順調ですよ」と言われると(面接試験を受けたわけでもないのに)何故かほっとしますね。
元気な赤ちゃんを見ているだけでも周りの大人たちは「元気のお裾分け」がいただけます。
子どもたちの力は本当に偉大です。(小児科医は果報者です)
そんな元気な子ども達は、家庭内で「誤飲・誤嚥」「転倒・転落・打撲」「やけど」「溺水」「窒息」などさまざまな事故を経験しながら成長していきます。
しかし、平成17年人口動態調査(厚生労働省)によると不慮の事故によって0歳児の174人(死亡順位:4位)、1~4歳児の236人(同1位)。合わせて410名もが命を落としており、さらに、死亡事故の陰には多くのニアミス事故が隠されていると推測されています。
兵庫県小児科医会の調査(H16)では0歳児の40.2%で “ニアミス事故以上”の経験があり、21.6%が医療機関を受診している事が分かりました。また、事故の大部分は家庭内で起こっている事もはっきりしました。
『子どもは怪我をするのが当たり前!!』などと軽く考えず、また逆に『アレしちゃダメ、コレもしちゃダメ』と過剰に反応しないで済むように。適切な「事故防止対策」に目を向けてみましょう。
子どもの事故の特徴は、順調な精神運動発達の段階によって刻々と変化する事です。子どもの成長の段階で起きやすい事故は異なってきます。
【事故の詳細】の表は、年齢・月齢ごとにどんな事故が起きたかを示していますが、子どもの個性はひとりひとり違うので成長にも個人差があります。「寝返り」をうてるようになると『ベッドやソファーからの転落』。「さかんに、はいはい」をするようになると『誤飲』『転落』。つたい歩きを始めると『転倒』や『やけど』などなど。ですから、年齢・月齢だけでなく子どもの運動機能の発達にも注意して見てください。
また、【事故の種類と発生時刻】および【事故発生時刻の分布(打撲、転倒、転落事故)】のグラフも参考にしてください。
お誕生日を過ぎて行動半径が広がってくると益々目が離せなくなります。(もちろん、しっかりと目を離さずに子供を見てあげることは親の責任もあり、楽しみでもあるのですが。)事故は一瞬で起こりますので、一生懸命に気をつけていてもすべての事故を防ぐことはできませんし、目を放さずに子どもを育てあげることも不可能です。
子どもは、大人にとって『想定外』と言われる事故をよくおこします。
目新しい物を見ると「大人用の使用マニュアル」にないことをやり、新しい製品に出合うと一見新しい事故(ボタン電池の誤飲やシュレッターの指詰め事故。ジェットバスの吸い込み事故など)が出現してきます。
しかし、そこには「こども用の使用マニュアル」があります。医療機関を受診するような事故の発生頻度は最近の20年間であまり変化していないそうです。(環境が変わってもこどもの行動パターンは決まっているということです。)横浜市の山中龍宏先生など子どもの事故に詳しい小児科医たちは「『想定外』『親の責任』で済ませず、事故情報を収集・分析し、同じ悲劇を繰り返させない仕組みを社会で作ることが大切だ」と訴えています。今後出現するかもしれない新しい危険も、今までの経験で未然に防いで行くことが大切です。また、こどもの事故の特徴を把握して『想定外』にならないように気を配っておきましょう。
今後、不幸なこどもを少なくするには「全ての子育て家庭」が事故防止対策に目を向け、そして実行していくことが大切です。
早速、かかりつけ医や保健所、インターネット等で具体的なチェックリストを入手して見てください。
事故の詳細
0歳
打撲・転倒 ・転落 |
ベッド・ソファー・椅子・バギー・階段・玄関 |
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誤飲・誤嚥 | タバコ・小さな物品(ねじ/クリップ/玩具/コインなど)・くすり・紙類(ティッシュ/新聞紙/アルミホイール/包装紙など)・化粧品 |
熱傷 | 熱い液体(おかゆ/調乳用熱湯/味噌汁など)・炊飯器・電気ポット・ストーブ・トースター |
溺水 | 風呂 |
1~2歳
打撲・転倒 ・転落 |
階段・自転車・家具・ベッド・ソファー・滑り台・ジャングルジム・バギー・椅子・歩行器・三輪車 |
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誤飲・誤嚥 | タバコ・くすり・小さな物品(玩具/コイン/ボタン/ペンダントなど) |
熱傷 | ホットプレート・鉄板・アイロン・熱い液体(うどん/味噌汁など)・ストーブ・電気ポット・グリル・炊飯器・花火 |
3~5歳
打撲・転倒 ・転落 |
自転車・階段・家具・ソファー・ベッド・肩ぐるま中 |
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誤飲・誤嚥 | 洗剤 |
熱傷 | ホットプレート・たこ焼き器・ストーブ・アイロン・やかん・味噌汁 |
溺水 | 風呂・プール |