小児科医会について

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ごあいさつ

会長のご挨拶

兵庫県小児科医会会長
辰己 和人

第36回日本小児科医会総会フォーラムin KOBEを終えて

第36回日本小児科医会総会フォーラム in KOBEは、6月14日・15日に神戸国際会議場で現地開催され、引き続き実施されたオンデマンド配信も、8月18日をもって盛会裏に終了いたしました。改めましてご参加いただいた皆様、ご講演・ご協力・ご支援を賜りました皆様に、兵庫県小児科医会を代表して心より感謝申し上げます。

今回のフォーラムのメインテーマは「What is biopsychosocial well-being?~こどもまんなかをめざして~」でした。 「こどもまんなか」とは、子どもの視点や意見を尊重し、子どもの最善の利益を最優先し、すべての子どもが権利を保障されながら幸せに暮らし、健やかに成長できる状態を表します。子どもたちの健やかな成長のためには、身体的、心理的・精神的なケアだけでなく、子どもたちを取り巻く家庭、地域社会、政策や制度の在り方を見直していく必要があります。その実現に不可欠なのが、biopsychosocial(BPS)的な視点だと考えられます。

今回のフォーラムでは、私たち小児科医がいかにBPSの視点で子どもたちと向き合うのか、ともに考えていただきたくプログラムを企画しました。私たちは日頃から多くの子どもと接していますが、常にBPSを意識しているわけではありません。しかし実際には、保護者(家庭)と接し、保育園・幼稚園・学校(地域社会)の状況を把握し、例えば感染症の流行状況を確認して登園・登校の可否を説明したり、時として理解の不十分な園や学校に連絡を取り説明を行ったりしています。発達に不安がある場合には保護者と話し合い、時には市町(制度・政策)の施設へつなげるといったBPSのハブ的役割を果たしています。すなわち、私たち小児科医はすでにBPSアプローチを実践しているのです。

今回のフォーラムを通じて、今行っていることを継続しつつ、意識的にBPSの視点を持つことが重要だと改めて感じました。ただし、私たちが診療現場で接するのは、何らかの症状を訴えて受診する子どもたちが大半です。身体的に健康な子どもを診る機会は、健診や予防接種のときに限られるでしょう。地域によって乳幼児健診の実施時期や方法(個別か集団か)は異なりますが、この機会こそBPSの視点で診たいと思います。時間的制約のある予防接種外来も、健康な子どもと接する貴重な場と捉えるべきでしょう。そうすれば診療はさらに楽しく、やりがいのあるものになるのではないでしょうか。

「こどもまんなか」とは、病気の子どもだけでなく、すべての子どもが well-being であること。そのことを改めて再認識したいと思います。

2025年8月