子どもの心と体
赤ちゃんの心・子どもの気持ち「子どもの心と体」
子どもの心身症について
「心身症」という言葉を聞くと、「心の病気なのかな?」と思われる方も少なくありません。
しかし、心身症は「心の病気」ではなく、心の状態や生活のストレスが、体の病気に関係している状態のことをいいます。つまり、体の病気ではあるけれど、その原因や症状の出方に“心”や“環境”が深く関係しているということです。 そのため、心のケア(カウンセリングなど)も大切ですが、体の治療をきちんと行うことが基本になります。どちらも大切にしていくことが、回復への近道です。 私たち小児科でよく見る心身症には、年齢によって次のようなものがあります。
- 乳児期(赤ちゃんのころ)
吐きやすい・お腹が痛い・下痢や便秘をくり返す、ストレスにより熱が続く、髪が抜ける、皮膚炎が悪化する など。 - 幼児期
乳児期のころから続く症状に加えて、周期性嘔吐症(自家中毒)や喘息などが見られます。 - 幼児〜学童期
「チック」と呼ばれる、まばたきや咳払いなどのくり返し動作が多く見られる時期です。 - 小学校高学年〜中学生
朝起きられない・立ちくらみがするなどの「起立性調節障害」がとても多くなります。
また、中学生ごろからは、食事のコントロールが難しくなる「摂食障害」や、お腹の不調「過敏性腸症候群」、息苦しくなる「過換気症候群」なども増えてきます。
また、最近では不登校が大きな問題になっています。
文部科学省の調査では、令和5年度の不登校の割合は、小学生で約2%、中学生では約7%にのぼり、年々増えています。不登校そのものは「心身症」とは少し違いますが、多くの場合、体の不調(頭痛・腹痛・だるさなど)と関係しているため、心と体の両方からのサポートが必要です。
2025年11月更新
母親との関わりに於ける赤ちゃん・子どもの発達について
子どもの成長は、体の発達・運動の発達・心の発達の三者が一緒になり且つ両親をはじめ周りの人々の援助を受けて発達します。また、成長には順序があり、個人差が大きいし何より子どもが成長してゆくことが大きなポイントです。
赤ちゃんとお母さんの日常で見れば、赤ちゃんは表情・行為(泣くこと)でお母さんに要求を伝え、お母さんが表情・行為でそれに応え、時々お母さんは赤ちゃんの信号の捉え方を間違うことがありますが、失敗してもやり直せば赤ちゃんもそれを受け入れてくれます。
赤ちゃんへの対応が完璧でなくともやり直しがきく(good enough mothering)ものです。
とにかくこの子が大好き・お母さん大好きという愛着形成Attachmentが基礎にあって想像力・言葉や感情を伝えること・周囲を理解すること・自分と相手を区別する・人を信頼する・人との関係を築くという能力が形成されます。
3才までに不安・恐怖・病気等に対してお母さんが支え慰めるという心の発達の安全地帯を形成できれば、子どもは1人で活動できるようになり、集団生活(心の中に母を抱えることになり)を始めることができます。
子どもは順を追って成長してゆくが、途中で独立しては不安になり母親にしがみついて不安を解消し、これを繰り返すことにより3才に第一次の親離れ・反抗期が訪れます。
学童から思春期について
この条約の締約国は、学校生活は心の発達を促す環境としてとても大切で、言い換えれば同世代と同じ経験をする・みんなと一緒にできる・やればできる・自分にもできる・やってみたい等の感情の経験がその後の成長につながる。
心の変化と身体の変化が不安定・アンバランスになる時期が思春期で、この時期が第二の親離れになります。
心の発達の順序は、乳幼児期には①快・不快から、②相手と気持を共有する、③意図の理解へと進み学童期には④仲間づくり、思春期には⑤自分らしさの獲得へと発展する。
成長発達してゆくためには①チャレンジと練習、②一緒にする仲間、③認められているという実感が必要です。
心とは関係性(対人関係で関係を持つ力)、社会性(社会の中で生きる力)、言語表現能力(コミュニケーション能力)、状況を判断する力(誰に頼るか?人に頼れる能力)、問題解決能力と言い換える事ができる。
子どもの特徴としては、①発達途上にある未熟な存在であること、②訴える力が弱い事、③先が読めない(だから不安定である)、④環境の影響を受けやすい、⑤ストレスを上手に発散できない等が挙げられます。
ストレス反応を生じるには、子ども自身の気質と環境に加えそのきっかけがある、きっかけとそのストレスを持続させる要因があって症状が発現すると言えます。
子どもの症状としては、①身体症状:どんな症状も起こりうる(心身症)、②精神症状:不安、うつ、イライラ、こだわり、不眠等、③行動:いじめ(加害者として)、不登校、暴力、非行、癇癪、過剰反応等々があります。
子どもに症状が出るには時間がかかりますが、まじめで几帳面な子どもに出やすく、子どものサインをできるだけ早くキャッチする必要があります。つまり症状の奥に隠されている事を探る事が求められるのです。
「ちさきこどもクリニック」副院長・地嵜和子先生の御講演より
子どもに対して大人が求められていること(心の発達の援助方法)
- コミュニケーション:言葉で伝えあう練習、できたことの確認(ほめる)。
- モデリング(お手本):やり直しがきくことを身をもって示す。
- 連携:仲間づくりのお手本・「味方がいる」事を知らせる。
- 見捨てない:どんな時もあなたが大切というメッセージを送る。
- 先取りしない:選択肢を示す(主体性の獲得)。
できたことをそれをやり始めたときにほめるという事が大切で、ADHDの親に対する「ペアレントトレーニング」という本がありますが、原則はできたことをほめ、悪いことは無視するということで、ADHDの親にとってだけでなく、総ての子育てに参考になる書物なので利用していただきたいとのことでした。
土屋 さなえ 兵庫県医師会報 平成24年2月号