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掲載日:2023.08.18

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カゼのときに抗生物質が必要と思っていませんか?

トピックス感染症情報

—抗微生物薬適正使用についてー

兵庫県医師会広報委員 田中尚子

 

発熱の時や扁桃腺が腫れて医者を受診した時には必ず抗生物質を処方されていませんでしたか?また、抗生物質はいらないと説明を受けても欲しいと思ったりしませんでしたか? 抗菌剤とは細菌を壊したり、増えることを抑えたりする薬をまとめてそのように呼んでおり、この中でも微生物が作った化学物質を抗生物質と呼びます。

 

1980年代以降、人に対する抗微生物薬の不適切な使用を背景として、病院内を中心に新たな薬剤耐性菌が増加しました。また新たな抗微生物薬の開発は減少しています。世界的にも多剤耐性・超多剤耐性結核、耐性マラリアなどが拡大しています。抗菌剤は人間だけでなく畜産業、水産業、農業など幅広い分野で使用されています。このため動物にも薬剤耐性菌が増加し人の健康に影響を及ぼしています。

 

このようなことから、20155月の世界保健総会で薬剤耐性(Antimicrobial Resistance;AMR)に関するグローバル・アクション・プランが採択され、加盟国は2年以内にAMRに関する国家行動計画を策定することを求められました。このことにより様々の国で畜産でも抗菌剤の制限をするなどのAMR対策を行うようになりました。日本では厚生労働省においてANR対策に関する包括的な取り組みについて議論がなされ、厚生科学審議会感染症部会薬剤耐性(AMR)小委員会において、2017年に「抗微生物薬適正使用の手引き」が作成されました。次に手引きの内容を紹介します。

 

通常の風邪(感冒)は多くはウィルスが原因で、症状は鼻の症状(鼻水、鼻づまり)、のどの症状(痛い、イガイガする)、咳、痰、発熱、頭痛、体のだるさなどです。大抵は7日ぐらいで自然に自分の免疫力によりよくなります。

 

急性咽頭炎は喉の痛みが主な症状で、感冒と同様よくある病気です。ほとんどはウィルスが原因ですが、細菌であるA群β溶血連鎖球菌(溶連菌)が原因のこともあります。喉の痛みは痛み止めで和らげることができます。一方、溶連菌感染症は処方された抗菌剤を用法、用量を守って飲み切りましょう。

 

急性副鼻腔炎は風邪やインフルエンザをきっかけに副鼻腔の粘膜が荒れたり、腫れたりする病気です。鼻水、鼻づまり、匂いがわからない、顔面の痛み、耳が詰まる感じ、咳、痰が見られます。症状がひどい時は症状を抑える薬を使うと楽になりますが、自然に治ります。鼻水が黄色や緑色でも細菌感染とは限りません。多くはウィルスが原因ですが細菌性が疑われて抗菌剤が処方されれば用法用量を守って飲み切って下さい。

 

急性気管支炎もほとんどウィルスが原因です。咳がひどい時は咳止め、頭痛や熱が辛い時には解熱鎮痛剤を使いましょう。症状が長引いた時には細菌感染症の合併も考えられますので、抗菌剤が処方された時には途中で内服を中止せずに用法用量を守って最後まで内服してください。これは病気を確実に治すため、抗菌剤による副作用を減らすためにとても重要です。このように抗菌剤を上手に使ってAMR対策をしましょう。

 I &C No438(8号)「エンジョイ・ヘルス」より抜粋